気管カニューレのあれこれ
さまざまな気管カニューレのサイズ選定方法と留意点
気管切開カニューレの適切なサイズ選定は、患者の安全な呼吸管理と合併症予防において極めて重要です。
本記事では、一般的な選定基準から特殊な形状、小児用カニューレのパイプ径の選定基準、そしてパイプ長さや形状の重要性について解説します。
1. 基本的なサイズ選定方法
気管カニューレのサイズ選定は、原則として胸部レントゲン写真を参考に慎重に行います。
気管切開孔の状態にもよりますが、カニューレの外径をベースに気管内径の2/3をわずかに超える程度を目安にするのが一般的です。
サイズが不適切な場合、以下のようなリスクが生じます。
太すぎる場合: 挿入困難や気管壁の損傷リスクが高まります。
細すぎる場合: 呼吸抵抗(息苦しさ)が増大し、呼吸仕事量も増加します。カニューレ内が分泌物などで閉塞するリスクが高まります。
また、カニューレのサイズ表記には「mm」と「Fr(フレンチ)」が混在しており、1mm=3Fr(例:内径8.0mm=24Fr)で換算されます。パイプ径には「外径」と「内径」があり、それぞれ「OD(Outer Diameter)」「ID(Inside Diameter)」と表記されることもあります。医療現場において、この外径(OD)と内径(ID)を混同して不適切なサイズを選択した結果、意図せず細い径を使用してしまい、患者が呼吸困難に陥った事例も報告されているため、注意が必要です。現在使用しているカニューレと異なるカニューレを選定する時は、一般的に外径を基準に選定します。メーカーや製品によって表記方法や表記箇所が異なるため、必ず製品化粧箱やフレームの記載を確認してください。
2. 楕円形状カニューレのサイズ選定方法
「コーケンネオブレス」などの一部製品は、パイプ径が真円ではなく楕円形状を採用しています。この場合、より安定した気道確保を目的として、「短径」を基準に選定することを検討してください。ただし、挿入時の気管切開孔周辺への負担や気管損傷を避けるため、現在使用中のカニューレのフィッティングや患者の気管径を十分に考慮して総合的に判断してください。
3. レティナ・開口部レティナの選定方法
ボタン型のレティナ・開口部レティナは、パイプ径に加えて「パイプの長さ」の選定が不可欠です。
径の選定: 現在使用中のカニューレの外径に近いものをレティナ・開口部レティナの外径4サイズ(外径7・9・11・13mm)から選びます。現在使用中のカニューレと差が1mm未満程度であれば、気道確保の観点から大きい方のサイズを検討してください。ただし現在使用しているカニューレと気管切開孔周辺のフィット感を考慮して総合的にご判断ください。
長さの選定: 専用の「レティナゲージ」を用い、気管前壁から皮膚までの距離を測定します。実測値より2〜3mm長めのサイズが推奨されます。これは、短すぎると内部フランジが開ききらず脱落の原因となるためです。一方で、長すぎてフランジが気管後壁に接触すると、肉芽形成や呼吸困難を招く恐れがあるため注意を要します。
4. 小児用カニューレの選定における配慮
選定方法は原則成人と同じですが、小児患者は気管が細く柔軟で、頸部も短いため、成人以上に慎重な選定が求められます。また、小児患者は成長によりカニューレサイズを変更する必要があります。適切なカニューレを選択し,定期的に気管内を内視鏡で確認することにより,肉芽や,気管腕頭動脈瘻の予防に努めることも重要です。一般的なサイズ目安は以下の通りです。
腕頭動脈の位置 ※成人イメージ
新生児 :内径3.0mm
6か月児:3.5mm
1歳児 :4.0mm
2歳児 :4.5mm
2歳以上:(年齢+16) ÷ 4.0mm
5. パイプの長さ・形状が与える影響
サイズ選定において、径(OD/ID)と同じく重要なのが、パイプの「長さ」と「形状(カーブ)」です。同じ外径でもメーカー・製品によりパイプの長さと形状は大きく異なります。患者の気管に対して長すぎる、あるいはカーブが適合していないと、気管壁への局所的な負荷がかかり、気管損傷や肉芽の原因となります。とりわけカニューレが原因となる最も重篤な合併症のひとつである気管腕頭動脈瘻には細心の注意が必要です。
適切なカニューレ選定は、患者のQOL向上や合併症のリスク軽減に直結します。個々の患者に合わせた最適な選択のために、これらの留意点を指標としてご活用ください。
なお、弊社ではカニューレを選定する際に使用する「カニューレテンプレート」をご用意しております。ご入用の際は、本サイト問い合わせフォームよりお申しつけください。
カニューレごとのパイプの長さと形状の比較
腕頭動脈(イメージ)
カニューレテンプレート
